秋野 かよ子 (あきの かよこ)
<詩作品>
早春の囁き
それは
すぐに消えてしまうのです
音もない空気の囁きが
聴こえているのです
ことばには
表せないのです
かすかな音は
悲しげな露を
作りはじめています
露の
ことばを探しに出かけて
棒で畑を
かき回したら
春の虫が
手伝いにきて
ほうれん草を
かじっていたのです
さくらの夢
それはまもなく
さくら色の夢が騒いで
ゆるい風が吹いてきて
薄い夢を広げていきます
ひともけものも
この時ばかりは木に寄り添い
桃色になり
花といっしょに揺れて
あしたを笑う足跡を残していくのです
花は喜び
明日しれず
冷える夜も
ふきあがる 花びら抑え
唇を噤んで
酔い続けていくのです